城の魅力

一般に「城」といえば、白亜の天守がイメージされることが多いと思います。現在、各地方都市の地域興しのパンフレットなどに「手前に石垣があり、その向こうに天守がそびえ建つ」式のイラストをよく見かけます。しかし、石垣や天守は城のごく一部にすぎないのです。

たとえば、東京都には200以上の城跡がありますが、石垣を持つ城は江戸城・八王子城・滝山城・片倉城などいくつかに過ぎず、天守を持つ城は、かつてはありましたが、現在では一つもありません。

しかし、天守がなくても城には魅力があります。出かける場所といえば必ず城跡、という人も少なくないようです。日本全国どこにでも城跡はあり、今は１００名城がブームでスタンプを集めている人もいるので全国を巡るのも楽しいと思います。

日本最北端の城、最南端の城は？

日本でもっとも北にある城と、もっとも南にある城をご存じでしょうか。
財団法人・日本城郭協会が選定した「日本100名城」によると、もっとも北にある城は、北の大地・北海道にある根室半島のチャシ跡群、五稜郭、松前城が選ばれていますが、そのなかでも謎に満ちているのがアイヌ族の人々が造った根室半島チャシ跡群です。

北海道の東の果て、根室半島の根室市に建てられたチャシは１６～１８世紀のもので、アイヌ語で砦や柵などを意味します。

しかしアイヌ人による文献が残っていないので、正確な役割は不明のままです。
その跡地のうち保存状態のいい２４ヵ所が国の指定史跡になっていて、いまでも堀の跡を見ることができます。

一方で最南端にある城が、沖縄から100名城に選ばれている今帰仁城、中城城、首里城です。
沖縄の言葉で城は「グスク」と呼ばれ、これら3つのグスクを含む沖縄の5つのグスクは世界遺産にも登録されている貴重なものです。

特に、沖縄本島の北部に位置する今帰仁村にある今帰仁城は沖縄でも最大級の城です。１３世紀に築城が始まったといいますが、その歴史はやはりはっきりしていません。

今帰仁城は標高約100メートルにある難攻不落の城ですが、1609(慶長１４)年に薩摩軍による琉球侵攻で落城、ついに炎に包まれてしまいます。しかし、その城跡にはいまでも万里の長城を思わせる雄大な石垣を見ることができるのです。
このように、北から南まで人々が生きた土地にはさまざまな城の歴史が残っているのです。